インプラントの保守とメインテナンス:長寿の秘訣
インプラント治療後の口腔機能やインプラント周囲組織の健康状態を維持、安定させるには、定期的なメインテナンスを継続して行う必要があります。(日本歯周病学会)
天然歯を喪失した結果としてインプラントの選択をする方が多いと思います。その場合、口腔内には天然歯を喪失させた原因が潜在的に残っているため、インプラントへも影響を与えます。(医歯薬出版) メインテナンスを継続して行いインプラントの状態や口腔清掃状態、周囲疾患等の異常の有無を確認することで、早期発見、早期治療に繋げることができるのでとても大切です。(日本口腔インプラント学会)
メインテナンスでは歯周組織の検査やプラークの付着状況、噛み合わせなどを確認し、歯とインプラント周囲の状態を確認していきます。(日本口腔インプラント学会)
また、メインテナンスにおいて特に関連が強いとされているのが“プラークコントロール“です。歯の表面に付着している細菌の塊であるプラークを除去して、口腔内の細菌数を可能な限り減らすようコントロールする事をプラークコントロールといいます。プラークは歯肉炎や歯周病、さらに全身疾患の原因にもなりますが、歯磨きで除去することができるので患者様ご自身でケアしていただくことができます。
磨き方は天然歯と同様にバス法で磨くことを推奨しています。まず、歯ブラシは毛先を歯に対して45度の角度に傾け、歯と歯肉の境に入るように少し圧力をかけて当てます。水平方向には少し大きい振動で動かし、垂直方向には小さい楕円を書くようにして磨きます。この時、歯ブラシの毛先が離れないようにして磨くと磨き残しがなく磨くことができます。磨き方は天然歯と同じ方法ですが、インプラント部分は形態が異なるので補助的に歯間ブラシやワンタフトブラシ、フロスなどを併用してご使用頂きます。使用時は形に沿わせて動かすことで清掃効果を上げることができます。
歯磨き粉はフッ素が含まれている場合、チタン表面を腐食する可能性を有しているので注意が必要ですが、ほぼ中性で濃度が1,000ppm以下の物であればご使用いただけます。(当院では、専用の歯磨き粉をご用意していますのでお声がけ下さい。)ご自身では磨くことが難しい歯肉縁下や歯石などは歯科医院で機械等を使用して除去し、プラークコントロールを行います。
また、歯軋りや食いしばりがある場合はマウスピースを使用していただくことで負担を軽減し、対合する歯やインプラントを保護します。これらを継続していただくことで口腔機能やインプラント周囲組織の健康状態を長期にわたり維持、安定させることができます。
人は歯を失うと口腔機能の低下により食事の質が低下します。これにより栄養面だけでなく顔面の数々の筋肉が衰えることで顔貌にも影響を与え、全体的な生活の質(QOL)の低下に繋がります。インプラント治療を行うことで咀嚼、嚥下機能が改善され、食事の質や生活の質(QOL)の向上が期待できます。
インプラントは喪失した歯列の回復だけでなく口腔機能の低下や全身の栄養状態の改善にも関係しているため、健康的で若々しく生活したい現代人には欠かせない分野となっており、正しくメインテナンスを行うことは長寿の秘訣といえます。